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導入事例
指紋で個人認証の精度を高め機密情報を守る


バケット、ブーム、アーム、ブレードその他、小型建機の金属部品を製造販売する汎建大阪製作所様は、工場における作業状況の「見える化」を実現すべくIoT現場管理システム WorkWatch(ワークウォッチ)を導入、生産性・安全性の両面で大きな成果を上げています。

現場作業の「見える化」が競争力を高める
  建設に不可欠な建機は大型と小型に大別され、得意とするメーカーも異なります。汎建大阪製作所様(以下「汎建」と略)は小型建機のフロント部品を主力商品とし、その中でも「掘る」「積み込む」など油圧ショベルの作業の要となるバケットについては年間生産数2万台と国内シェアトップを走っています。世界規模で需要が旺盛な建機ですが、建機メーカーは熾烈な戦いを繰り広げており、部品メーカーに対するコストダウンの要求も厳しさを増しています。

このような市場環境の中、汎建ではワーカーの安全性を確保しつつ生産性を向上する手法への取り組みを開始、ラトックシステムとの共同開発の下に完成したのがIoT現場管理システム「WorkWatch」です。

汎建大阪製作所本社工場にて、
バケットの製造工程
 
株式会社汎建大阪製作所
川村純一社長
「製造コストは加工費、材料費、管理費という3要素から成りますが、この中で変動が大きく予測が立て難いのが加工費です。つまり加工費は見え難いだけに、これを見えるようにすればコスト削減効果は大きいということです。機械部品製造では、材料切断、プレス、溶接、塗装という一連の流れにおいて手作業の比率が依然として高く、この手作業をどのようにデータとして取り込んで作業状況を把握するかが長年の大きな課題でした」(汎建・川村純一社長)

この課題を解決すべく開発したのが、ワーカーが身に付けるWorkWatch端末です。これはその名の通り腕時計型の端末で、ワーカーはこれを身に着けて簡単に作業データを収集し、このデータを工場に設置したゲートウェイ経由で事務所PCに送信して、工場内の作業状況を事務所でリアルタイムに把握できるというものです。

簡単操作のWorkWatch端末
  WorkWatch端末には、液晶表示板と3つのボタンがあり、ワーカーは作業開始時に開始ボタンを押し、終了時には終了ボタンを押すだけで、作業データが送信されます。
  WorkWatch端末のもう一つ大きな役割が、ワーカーの安全性確保です。WorkWatch端末には通信機能以外に、温度、湿度、気圧、6軸加速の各センサーが組み込まれており、遠隔地から現場環境のリアルタイムな把握が可能です。これらセンサーによって、現場の温度や歩数の把握、さらにはワーカーの転倒や落下など万一の事故が生じた場合にも迅速に対処することができます。この各種センサーについては「それぞれのセンサーの特性を見極めながら、実験を繰り返す中で各現場に応じた最適なパラメーターを決定していく必要があるので、フル活用するにはもう少し時間が欲しい」ということです。
 

またWorkWatch端末から事務所にデータを送信するだけでなく、事務所側から特定または全部のWorkWatch端末に対して、作業遅延の通知や呼び出し、異常の通知などアラーム (振動)と画面表示で通知することができます。さらに自分の出来高数や作業時間など、液晶画面でワーカー自身が確認することも可能です。WorkWatch端末の電源は市販のCR2032リチウムイオン電池1個で、通常の使用で半年間の駆動が可能です。

WorkWatch端末は現在のところ腕時計型1種類ですが、「現場での利便性を考慮してまずは腕時計型を商品化しましたが、据置型など要望に応じて端末のバリエーションを広げる予定」とされています。

IoT現場管理システムWorkWatchは、ワーカーが身に付けるWorkWatch端末、現場で端末との通信を行うゲートウェイ、ゲートウェイと事務所間の通信を行うホストアダプター、専用ソフトウェアで構成されます。
WorkWatch端末とゲートウェイとの通信にはBLEを採用し、広い工場内では複数のゲートウェイを設置して全体をカバーすることになります。また事務所PCに接続するWorkWatchホストアダプターと現場ゲートウェイとの通信には920MHz帯(SubGiga帯)を採用し、見通し1kmという遠隔地間通信を可能としています。920MHz帯(SubGiga帯)の採用によって、4Gなど商用通信サービスのようなランニングコストが不要となり、コスト削減という大きな目的に向けたシステムには最適です。

 
  1台のゲートウェイでWorkWatch端末を16台まで登録することが可能です。更にゲートウェイを追加することにより、最大112台のWorkWatch端末を登録できます。

生産性向上、生産管理の精度向上、安全性向上
  IoT現場管理システムWorkWatchの導入メリットは、生産性向上、生産管理の精度向上、安全性向上の3つに集約できます。まず生産性向上では、作業の進捗状況の見える化を実現します。管理者はライン全体の状況を常に把握し、遅延時にはワーカーヘアラームを通知してスピードアップを促すなど、遅延工程の対策を迅速に行うことができます。さらに実績データから生産性向上の改善点を明確にし、実効性のある対策が実施できます。生産性の精度向上については、実績データから現場の実情にあった効率的な生産計画を立て、その予実管理が可能です。安全性向上については、現場の状況を見える化することで、異常をいち早く検知してアラームを通知し、事故を未然に防止することができます。
 
WorkWatch端末は軽量かつ操作性を
重視した設計となっています。
建機産業に限らず多くの製造業にとって、ワーカー全員が同じレベルで同じ品質で同じ時間で同じ結果を出すことが理想であり、これが競争力に直結します。競争力の強化が企業成長につながり、それがワーカーの利益にも反映されることになります。その原点となるのが現場作業の見える化です。汎建では2016年末にIoT現場管理システムWorkWatchを導入、実証実験を繰り返しながら改良を加えてきました。
IoT現場管理システムWorkWatchを導入するに当たって川村社長が配慮したのが「作業状況を見える化することに対するワーカーの反応」です。そこで現場で働くワーカーが違和感なく使えるような操作性を徹底し、かつワーカーの安全性を高める機能を盛り込みました。その結果、当初からワーカーの反応は良好で、導入による成果は予想をはるかに上回るものであった様子です。
 
  ゲートウェイからは目標値や出来高数の表示、呼び出したワーカーの番号などを表示することができます。
※写真は別売の増設アンテナを取り付けています。
専用ソフトウェアからは、ワーカー単位の出来高数・平均サイクルタイムや周辺の温度が把握できます。
 


建機の需要は世界規模で伸びています。開発途上国における需要増は当然として、最近は都市化が進んだ地域での小型建機需要が活発で、欧州や北米など先進諸国での需要が急増しています。統計資料によると、小型建機の需要は2016年に13.5万台であったのに対して、2020年には15万台と予測されています。

需要増が見込める分野ではメーカーの意欲も高く厳しい競合が繰り広げられる中、「中国のコストで日本の品質を提供する」汎建への期待もさらに高まっています。
今回のIoT現場管理システムWorkWatchの導入によって、「まずは現場作業の見える化」を実現した汎建ですが、現在は「その結果を見てどこをどのように改善するかは人間が判断している」段階です。これをさらに進めて「蓄積された膨大なデータを基に改善点や最善手法をAIによって判断する」段階を目指して、川村社長の努力は続きます。



取材日:2017年5月

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