【ラトックシステム開発秘話】ゼロからの製品化に挑んだ重心動揺計の舞台裏

【ラトックシステム開発秘話】ゼロからの製品化に挑んだ重心動揺計の舞台裏

本記事では、これまでのハードウェア開発経験を活かして、ゼロから医療機器を作り上げた開発者へのインタビューをもとに、設計から製品化までの舞台裏をご紹介します。

重心動揺計について

人は無意識に身体のバランスを取りながら、立ったり歩いたりしています。重心動揺計は、身体の微細な重心移動を測定し、立位バランス機能に問題がないかを検査する医療機器です。いわば“めまい検査のプロ”とも言える装置で、バランス能力の検査やリハビリ指標として使われています。

2025年9月、日常的に使える新しい重心動揺計「REEVEER Scale(リーバー スケール)」が、(株)Parafeed社から登場しました。

これは専門医のアドバイスを受けながら、IT開発とセンサー技術の専門チームが連携し、検査精度と操作性を両立した製品です。専用ソフトウェアを搭載したノートPCと、高精度センサー内蔵の測定台で構成され、リアルタイムで重心位置とその揺れ(動揺)の計測・解析がおこなえます。当社はセンサー技術の専門チームとして、本製品のハードウェア開発を担当しました。

開発のきっかけ

依頼は「高精度な計測ができる重心動揺計を、ゼロから作ってほしい」──。医療機器としての要件を満たした部材の選定と調達、納品サポートも含めたフルセットの開発です。

初挑戦のジャンルながら、検証→設計→最適化と段階を追って一歩ずつ仕上げていき、技術仕様と品質要件を両立させました。

まずは分解してみる──市販体重計からの発想

はじめに手に取ったのは、市販の体重計です。分解し、荷重の伝わり方や構造の工夫を観察するところからスタート。この調査が設計のヒントになりました。既存製品に学び、技術の糸口を探る──開発の醍醐味です。

ロードセル計測の最適化で精度を追求

プロトタイプでは、木製ボードに4個のロードセルを設置。ロードセルは小さな電圧の変化からひずみを検知するセンサーです。繰り返し計測して回路とデータ処理を調整し、精度を高めていきました。

  • 電源ノイズ対策
    昇圧 → 降圧のリニアレギュレーターを使って整流化、微小なアナログ信号を正確に読み取る回路を設計しました。
  • 計測アルゴリズムの工夫
    データの取得頻度や平均化処理を繰り返し見直し、バランス測定に最適なファームウェアを設計しました。

揺れない筐体設計のための試行錯誤

重心動揺計は不要な振動の影響を抑えて、身体バランスだけを正確に捉える必要があります。筐体の安定性がデータ精度を左右するため、部材の選定にも余念はありません。

これらを組み合わせることで、ゆっくりとした大きな揺れから細かく速い振動まで、幅広い周波数帯の振動をしっかり防ぎ、測定精度を高めています。

白で統一、衛生感と安心感を両立

医療・リハビリ環境での清潔感を重視し、本体筐体、操作ラベル、付属ケーブル、梱包材までを白色で統一。業界ならではの視覚的安心感を意識した要望に応えました。

検査手順の標準化と品質保証

製品の品質を一定に保つため、以下の体制を整備しました。

これらにより、すべてのロットで同等の計測精度を保証しています。

最後に

私たちは設計・検証・素材選定の各段階で、これまでPC周辺やIoT関連機器の開発で培ってきた技術を注ぎ込みました。検査において、センサーデバイスは「計測精度と信頼性の土台」です。その土台をつくり込むことで、めまい検査に求められる厳しい要件をクリアし、医療現場に安心して導入いただける製品を実現しました。

今後も積み重ねてきた開発力と新たな分野への挑戦を礎に、お客様の期待に応えるハードウェア開発を継続してまいります。

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